新規事業の立ち上げやシステムの刷新を考えるとき、多くの経営者やプロダクト責任者が同じ問いに直面します。自社でデザイナーやエンジニアを採用するのか、それとも外部のプロダクトスタジオに開発を依頼するのか、という問いです。
どちらが正解ということはありません。どちらも状況に合えばうまくいき、合わなければ失敗します。本記事では両者を公平に比較し、それぞれが強い場面を整理したうえで、判断に使えるチェックリストを紹介します。
開始までにどれくらいかかりますか?
最も大きな違いは開始までのスピードです。社内チームを作るには、求人票の作成、候補者探し、面接、内定、前職の退職手続きを経る必要があります。シニア人材一人でも二か月から四か月かかることが多く、五、六人のチームとなると一年近くかかることもあります。日本では経済産業省がIT人材の不足を予測しており、採用の難しさは今後も続くと見られています。
プロダクトスタジオにはすでに稼働中のチームがあります。最初の打ち合わせと要件定義を経て、通常は数週間で開発を始められます。市場投入の時期や資金調達、顧客との納期が迫っている場合、この差だけで判断が決まることもあります。
実際のコストはどう違いますか?
給与とスタジオの費用を単純に比べるのは適切ではありません。コスト構造がまったく異なるためです。
社内チームのコストは主に固定費です。給与に加えて、福利厚生、機材、ソフトウェアのライセンス、採用費や採用にかかる社内工数、オンボーディング、チームを管理するマネージャーの時間がかかります。ロードマップが固まらず手が空く期間にも費用は発生し、採用のミスマッチを解消するのも簡単ではありません。
スタジオのコストは主に変動費です。範囲を決めた受託開発ならプロジェクト費用、一定の稼働量を確保するラボ型開発なら月額費用を支払います。時間単価は同等の給与より高くなることもありますが、採用費、待機時間、管理階層のコストはかからず、作業が終われば縮小や終了ができます。
- ロードマップが短い、または不確実な場合は、全体としてスタジオのほうが安くなることが多いです。
- 長期的で安定したロードマップがある場合は、時間とともに社内チームのほうが安くなることが多いです。
- 両方の隠れたコストを考慮してください。社内なら採用と管理、スタジオなら調整と引き継ぎです。
一人の採用か、複数の専門スキルか?
現在のデジタルプロダクトには、UX/UIデザイン、フロントエンド、バックエンド、iOSとAndroid、クラウドとDevOps、QA、さらにAIや業務自動化など、多くの役割が必要です。初期段階では、その多くは部分的な稼働で十分です。
小規模な会社がエンジニアを二人採用すると、得られるのは二人分のスキルです。デザイン、テスト、インフラは後回しになるか、専門外のメンバーが担当することになります。スタジオなら一つのチームからすべての役割を必要な分だけ活用できます。デザイン会社と開発会社が別々だと、その間の受け渡しで遅れや認識のずれが生じますが、一つのチームであればその問題も避けられます。
管理、文化、ナレッジの面でのリスクは?
社内チームなら管理は完全に自社で行えます。会議に参加し、顧客を理解し、企業文化を共有しています。優先順位の変更もすぐに伝わります。スタジオは協力して動きますが別の会社なので、明確な目標、定期的な打ち合わせ、共有のバックログで方向性をそろえる必要があります。
外部チームと働くうえで最大のリスクはナレッジの喪失です。スタジオが離れた後、誰もコードを理解していなければ身動きが取れなくなります。最初から次の点を押さえておきましょう。
- リポジトリ、クラウドアカウント、デザインファイル、ドメインは初日から自社で所有する。
- 設計、環境構築、主要な判断の記録を、最後にまとめてではなく開発中から文書で残してもらう。
- 画面だけでなく、デザインシステム(再利用できる部品とルール)を作ってもらう。
- スタジオと自社メンバーが一緒に作業する引き継ぎ期間を計画する。
- プロジェクトマネージャーだけでなく、実際に手を動かすメンバーと直接話せる体制を選ぶ。
社内チームが明らかに有利なのはどんな場合ですか?判断チェックリスト
ここは率直にお伝えします。次のような場合は自社チームを持つべきで、スタジオは一時的な手段にすぎません。以下のチェックリストを確認してください。多くの項目が当てはまるなら、今すぐ社内採用を始めることをおすすめします。ほとんど当てはまらないなら、スタジオへの依頼か併用型が適している可能性が高いです。半分程度なら、併用型が最も安全な選択です。
- ソフトウェアそのものが中核製品であり、主な競争力の源泉である。
- 数年単位の安定した開発計画と、それを支える資金がある。
- 複雑な規制や専門的な業務フローなど、習得に何か月もかかる深い業務知識が必要である。
- 本番環境の運用に日常的に対応できる人員が、事業の近くに必要である。
- 採用、マネジメント、定着を担える強い技術リーダーがすでにいる。
併用型(ハイブリッド)はどのように進めますか?
多くのスタートアップや中堅企業にとって、最適な答えはどちらか一方ではありません。よくある進め方は、スタジオが初期版を開発している間に、自社で最初のエンジニアや開発責任者を採用するというものです。新しいメンバーは早い段階から参加し、コードレビューや意思決定に関わりながら、少しずつ主導権を引き継ぎます。その後スタジオは、モバイル、DevOps、デザインなどの専門領域で支援を続けるか、完全に離れます。
これにより、今のスピードと将来の自社所有の両方を得られます。成功のポイントは、最初から引き継ぎを計画しておくことです。ツールを共有し、ドキュメントを随時残し、社内チームが主導する時期を明確に決めておきましょう。
Devnori の進め方
Devnori は、インドを拠点に世界中のお客様とリモートで仕事をする、少人数でシニア中心のプロダクトデザイン・エンジニアリングスタジオです。UX/UIデザイン、フロントエンド、バックエンド、iOSとAndroid、クラウドとDevOps、AIと自動化、QA、プロダクト思考という八つの役割を一つのチームで担います。これまでにWebプラットフォーム、モバイルアプリ、社内ツールなど60件以上のプロジェクトを手がけ、Opticdigit や TrainFoxx などの自社プロダクトも開発・運営しています。
契約形態は二つあります。プロジェクト型は範囲を定めて最初から最後まで担当し、ディスカバリーとスコープ定義のワークショップから始まり、引き継ぎとドキュメント作成で完了します。エクステンデッドチーム型はラボ型開発に近く、月単位で柔軟に稼働量を調整しながらお客様のツールや進め方に合わせて動くため、併用型にも適しています。言語の壁は、文書中心の要件整理、リアルタイム翻訳と要約を活用したAI支援の会議、プロトタイプなど視覚的な資料で補っています。どの案件も事業目標についての最初の打ち合わせから始まり、率直な提案をお出しします。社内採用のほうが明らかに適している場合など、Devnori が最適でないと判断したときは早めにお伝えします。